2000年11月23日    客室係

  旅館は、、女将とあるじが ふたりでいくら頑張っても、できるお仕事
 ではありません。

  お客様が快適にお過ごしくださるために、館内をきれいにお掃除して
 くれる係りや裏方のスタッフ。

  美味しいお料理を、心をこめて たんねんににつくってくれる
 料理長と厨房のスタッフ達。

  そして、心やすらぐ対応をしてくれる、お客様担当の係りがいます。

  その、客室係りの事ですが、

  今、当館に入って3ヶ月にも満たない20代前半のふたりを
 育てています。

  まだまだ、立ち振る舞いはぎこちないのですが、少しずつ、渚館きむら
 のおもてなしが身につけたらと思っています。


  先日のことです。チェックアウトされた5名様グループのお客様が、
 お帰りになる際に、

  「お料理も美味しく、係りの方がやさしく親切で とても気持ちが
   よかった。またおじゃまします。」  と喜んでお帰りになりました。

  そして、アンケートの中の心に残る従業員の欄に新人の名前も書いて
 ありました。

  私は とても嬉しくて、朝食出しにきている彼女に、さっそくアンケートを
 見せてお話しました。

  「○○さん、このアンケートに貴方のことが誉めてあったのよ。
   本当に良かったね。」 と 話すと、 

 彼女はまんべんの笑みをうかべて、とても嬉しそうに聞いていました。

  「窓からの景色と お料理を楽しみに来られるお客様が、接客によって
  満足を満たされます。  沢山ある旅館の中から きむらを選んで来て
  下さったその感謝の気持ちで お迎えしましょうね。

  その気持ちがお客様に伝わると喜んでいただけるものなのね。」  


  旅館という仕事は、忙しいときとひまな時の落差がはげしく、忙しいときは
 昼夜ずうっと走りまわってなければなりません。

  そんなあとの、お客様のお帰りのときに
 「良かったよ」って言ってくださるお言葉で、疲れがどこかに飛んでいって
 今日から、またきむらへお越しいただけるお客様をお迎えしようと頑張れる
 のです。

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  おととし入った新人が10ヶ月できむらをやめて全く別の仕事につきました。

  その別の仕事をしていると、やはり接客業が自分には向いていると郡部の
 海鮮レストランに勤めました。
  そのレストランに勤めはじめ,お仕事をしていると、ここはきむらと違う,
 お客様に対しての接客が何か違うと思いはじめ、「きむらにもどってきたい」
  と わがまま娘が社会勉強をして帰ってきました。

  私は、とても嬉しかったです。それからの彼女は、時々、お客様から接遇を
 誉めていただけるような仕事をしていました。

  でも、その彼女は、今年、お嫁にいっちゃいました。今はおなかに小さな
 生命を宿らせて新しい生活にがんばっているようです。


  私は旅館に嫁ぐにあたり、すごい反対をおしきってお嫁にまいりました。
 いくら主人が好きだと言っても、やはり、旅館業というものは、私にとって
 言葉では言い表せないほど大変なものでした。

  私は、毎日、毎日、
       「あー お嫁にくるんじゃなかった。専業主婦がよかった」 と 
 心の中でぐちばかり・・・・・・(あなた ごめんなさい。)

  ところが今では、女将としての楽しさが少しずつ感じられるようになった
 このごろです。
  常連のお客様がふえはじめ、「また来たよ」って、お気軽に起こしいただけ
 ること、いろんな方とのふれあい、そして、各担当のスタッフが良い店を
 つくるために、一生懸命、毎日がんばっている姿をはげみに今では、とても
 いきがいのある毎日を過ごしています。  ・・・・・  が

     まだまだ未熟な為、苦労も多い毎日です。
                                      女将


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  「お嫁にくるんじゃなかった」 と 言われたら、つらい立場のあるじです。

   女将とあるじの、結婚までのみちのりは、テレビドラマや映画にでも
 なるような、はらはら、どきどきの物語だったのに、「専業主婦が良かった」
 なんて言われたら、ショックだー。

  それにしても、女性は強くなる。 強きもの 汝の名は女将なり。

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  女将の話の中の「わがまま娘が帰ってきた」ことは、ほんのまれに
 あることです。うちのほうが、居心地が良いのかどうかはわかりませんが
 よそに勤めて、ひとまわり大きくなって、また、戻ってきてくれるという事は
 本当に嬉しい事です。

  やっと、1人前の仕事ができるようになっても、若い女性は結婚で
 退社しますから、がっかりすることもあります。
  でも、お祝事ですから心から祝福いたします。

  そして、また、ベテランのスタッフと一緒に、若い新米さんを育てる
 仕事が始まるのです。

                                     主